ラ・ラ・ランド、プルースト・・音や香りの持つ記憶について。





音や香りの持つ記憶について。

ラ・ラ・ランド、大好きな映画ですが、特にラストのシーン…(ピアノの演奏から…)が好きで夜中に度々そこだけ観てしまいます。

鍵盤をヒットする音、想い出の曲がキーとなって、主人公二人の幸せだった時間と、もしも…の未来を演出し、なんとも切なく感動的なエンディング。

本当に想い出の曲は一瞬で時空が捻れたように自分たちの記憶を呼び戻してくれますね。
音だけでなく、香りもまた、同じような働きをしてくれますね。

懐かしい香りや大好きな香りは一瞬でその記憶だけでなく、感覚や、感情を呼び覚ましてくれます。

フランスの作家プルーストは、その感動を何ページもの名文で表現しています。
その一部ですが抜粋を。


――私は何気なく、お茶に浸してやわらかくなったひと切れのマドレーヌごと、ひとさじの紅茶をすくって口に持っていった。

素晴らしい快感、孤立した、原因不明の快感が、私のうちに入り込んできたのだ。

いったいこの力強い喜びはどこからやって来たのか?

求めている真実が、紅茶の中でなく、私のうちにあることは明らかだ。

そのとき一気に思い出があらわれた。

こんなに長いこと記憶の外に棄てて顧みられれなかった思い出の場

消え去るか眠り込むがしてしまい、膨張して意識に到達することを可能にする力を失っていたのだ。

けれども、人々が死に、ものは壊れ、古い過去の何も残ってないときに

脆くはあるが強靭な、無形ではあるがもっと執拗で忠実なもの、つまり匂いと味だけが、

長いあいだ魂のように残っていて

ほかのすべてのものが廃墟と化したその上で、思い浮かべ、待ち受け、期待しているのだ。

その匂いと味のほとんど感じられないほどのしずくの上に、たわむことなく支えているのだ。

あの巨大な思い出の建物を。


――プルースト「失われた時を求めて」




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